2025年4月17日

【譲渡前に必ず記録を!】西武鉄道の『サステナ車両』の車種、東急電鉄9000系について

2023年9月26日に西武鉄道が小田急電鉄・東急電鉄と環境負荷の少ないVVVFインバータ制御の『サステナ車両』(西武鉄道の独自呼称)の譲受における連携に合意したことを発表、小田急電鉄の鋼製車体の8000形と東急電鉄のステンレス車体の9000系の、約100両が2024年度から2029年度にかけて西武鉄道に譲渡されます。この記事は東急電鉄9000系列の今後について、あくまでも個人的予想であることをご容赦のうえでお読みください。

1986年2月に旧東急車輛製造横浜製作所から登場、元住吉検車区に8両14編成、長津田検車区に5両1編成の15編成117両が配置された9000系ですが、現在は9007Fの新製配置先の長津田検車区に集約され、15編成75両が在籍します(転用対象外の42両は廃車済み)。2025年には6020系5両固定編成が登場し、同系列15編成と2000系を改造編入した3編成が新型車両投入によって置き換えられる見通しです。ここでは譲渡対象候補となる編成を紹介します。

【9000系9001F
元住吉検車区への新製配置から2013年3月まで東横線で活躍した9001Fは量産先行車で、実は何度か大井町線での運用を経験しており(同系列導入時、田園都市線のCS-ATC導入に伴うATC工事の予備確保、大井町線のATC導入に伴う予備確保の時に経験)、2013年に長津田検車区に転属して正式に大井町線に活躍の場を移しました。東横線在籍時にラストランヘッドマークを掲出していました。現在は種別行先案内表示器や列車番号表示器が2013年の正式転属前とは異なりますが、東横線時代の赤帯が前面部に復刻され、運用されています(ただし田園都市線との誤乗防止継続のために『大井町線』ステッカーは側面部のみ存置)。

【9000系9002F
元住吉検車区への新製配置から転属まで東横線で活躍した9002Fは実は5050系増備車の導入に伴う転属が最も早く、2009年度に入ってからですので、大井町線での一時運用を経験した9001Fと新製配置時から大井町線生え抜きの9007Fを除き、東横線からの転用された9000系では大井町線での運用歴が最も長い編成となっています。

【9000系9003F
元住吉検車区への新製配置から転属まで東横線で活躍した9003Fは2010年度から運用されており、当初は種別行先案内表示器が幕式、菱形パンタグラフのまま転入しましたが、パンタグラフがシングルアーム式に換装されたあと、種別行先案内表示器がフルカラーLED化されました。木目調に更新されている車両とあって、動向が注目されています。

【9000系9004F
元住吉検車区への新製配置から転属まで東横線で活躍した9004Fは2010年度から運用されており、9003Fの後に続くように転属していきました。9000系では珍しくスタンションポールが未設置であるほか、同系列で唯一座席モケットが5000系列と同じ緑色に更新された編成でもあります。転属時はシングルアームパンタグラフで種別行先案内表示器が幕式でしたが、そのあとフルカラーLED式に更新されています。

【9000系9005F】※運用離脱中
元住吉検車区への新製配置から2013年3月まで東横線で活躍した9005F9001F9010Fとほぼ同時に長津田検車区に転属となりましたが、大井町線での運用は約12年と短く、長津田車両工場に入場しています。種別行先案内表示器が撤去されるなどの動きを見せているため、どんな姿になるのか想像がつきませんが、西武鉄道への譲渡が決まっていることから、解体ではなさそうな気がします。

【9000系9006F
元住吉検車区への新製配置から転属まで東横線で活躍した9006Fは2010年度から大井町線で運用されていますが、東横線時代は“TOQ-BOX”装飾編成として活躍しました。転属した当初はパンタグラフがシングルアーム式で列車番号表示器だけLED化されていました。9001F9005F以外のここまでの編成は転属が早かった印象がありましたね。

【9000系9007F】※生え抜き編成
新製当初から長津田検車区に配属された9007Fは5両固定編成となり、同系列で唯一東横線に在籍しなかった編成となっています。なお一時期3両固定編成に短縮してこどもの国線で運用されたこともあります。パンタグラフは東横線に在籍していた編成と異なり早い段階でシングルアーム式に換装されましたが、スカートの設置は種別行先案内表示器の更新を兼ねて2013年度に行われました。この編成では大井町線90周年記念の電車、東急電鉄グループ100周年のラッピング電車に起用されていました。

【9000系9008F
元住吉検車区への新製配置から転属まで東横線で活躍した9008Fは2010年度から大井町線で運用されていますが、東横線時代には横浜高速鉄道みなとみらい線開業前の試運転にも使用されたことがあります。当時はみなとみらい線と東横線が線路で繋がっていませんでしたので陸送で搬入されたのも話題だったかと思います。

【9000系9009F
元住吉検車区への新製配置から転属まで東横線で活躍した9009Fは実は5050系増備車の導入に伴う転属が9002Fに次いで早く2009年度に行われ、大井町線での運用は比較的長めです。転属の際には種別行先案内表示器のフルカラーLED式への換装とシングルアームパンタグラフへの交換が実施され、これが今後大井町線仕様となる9000系の標準装備となるわけですが、当時では異例でした。列車番号表示器はそのあとLED化されました。

【9000系9010F
元住吉検車区への新製配置から2013年3月まで東横線で活躍した9010F9001F9005Fとともに大井町線に転属、大井町線での運用はあまり長くありませんが、東横線では2013年まで運用されていたというのが特徴です。最後の3編成の転属により9000系の中間付随車は完全に消滅しています。先はそう長くありませんが、9005Fが早々と運用離脱したことから、同編成が少しでも少しでも長い期間活躍してくれることを期待します。

【9000系9011F
元住吉検車区への新製配置から転属まで東横線で活躍した9011Fは2011年度から大井町線で運用されていますが、同年度の転配は2011年3月に発生した東日本大震災の影響か、2編成にとどまりました。転属の際には種別行先案内表示器のフルカラーLED化などが実施されていましたが、パンタグラフは菱形のまま存置されていました。

【9000系9012F
元住吉検車区への新製配置から2013年3月上旬に完全に転属するまで東横線で活躍した9012Fは同年度から大井町線で運用されています。この編成も東横線には終盤まで残っていた印象があります。木目調の車内となっていますが、先に運用を離脱した9005Fも木目調に更新工事を受けた編成でもありますので、今後の動きに注意したいところ。

【9000系9013F
元住吉検車区への新製配置から転属まで東横線で活躍した9013Fは2011年度末に大井町線へ転属して運用されていますが、もとシャボン玉装飾で走っていた編成で、期間限定でのラッピング車にも起用されていました。転属の際には種別行先案内表示器はフルカラーLED式、パンタグラフはシングルアーム式に換装されていました。

【9000系9014F
元住吉検車区への新製配置から2012年頃まで東横線で活躍した9014Fは2013年に入ってから大井町線へ転属して運用されています。転入はラストナンバーの直後となりました。こちらは転入時は種別行先案内表示器がフルカラーLED化されず、パンタグラフがシングルアーム式に換装された程度となっていましたね。

【9000系9015F
元住吉検車区への新製配置から2012年度まで東横線で活躍した9015Fは同年夏に大井町線へ転属して運用されています。転入は同年度では初でしたね。。こちらは転入時は種別行先案内表示器がフルカラーLED化されず、パンタグラフがシングルアーム式に換装された程度となっていましたね。

これまでは新製当初からある9000系ですが、実は制御装置を更新して一部車両を組み替えて誕生した2000系から改造編入された3編成(9000・9020系)もいます。こちらも譲渡対象の可能性があることからここで紹介します。

【9000・9020系9021F(元2001F)】
9000・9020系9021Fの種車は元2001Fの先頭車2両と、元2002Fの中間電動車1両、元2003Fの中間電動車2両で組み替えたものです。デハ9421(元デハ2303)は4号車に組み込まれている車両ですが、実は元2003Fとして大井町線を走行した時期があり、2号車に組成されていました。その1両だけは元2003F時代と9021F時代に大井町線を経験した車両になります。

【9000・9020系9022F(元2002F)】
9000・9020系9022Fの種車は元2002Fの先頭車2両と中間電動車1両、元2003Fの中間電動車2両を組み替えて誕生したものです。元2003Fの中間電動車を活用したのは10両編成の時代に制御装置更新工事や座席モケットを交換していたためで、その車両をなるべく活用することを考慮したためです。なおこの9022Fが2000系が9000系列に編入された初めての編成でした。

【9000・9020系9023F(元2003F)】
9000・9020系9023Fの種車は元2003Fの先頭車2両と中間電動車2両、元2002Fの中間電動車1両を組み替えて誕生したものです。元2003Fの時代に現在のデハ9421(元デハ2303)が2号車に連結されていました。その車両が9021Fに新たに転用されたと同時にその穴埋めでデハ9223(元デハ2302)が連結されたことで改番となりました。

9000系は西武鉄道8000系(元小田急電鉄8000形)とは異なり、多摩湖線・多摩川線・秩父線・狭山線に導入され、新101系を置き換えていくものと思われます。大井町線時代には5両固定編成ですが、西武鉄道では5両固定編成自体が存在しないことから、4両固定編成に変更するなど譲渡を見越した大規模改造を行っている可能性があります。国分寺線以外の支線系統でワンマン運転を行っている路線もあるため、ワンマン運転対応車両にするための工事も予想されます。また制御装置がGTO素子のまま未更新であるため、制御装置更新工事の施工も見込まれます。なお譲渡された際の系列名がどうなるかですが、池袋線から多摩湖線に転用の9000系が存在することから、西武鉄道での系列名にも注目が集まりそうです。

【9000系の在籍状況】※2025年4月16日現在
全体…17編成85両/18編成90両
運用中…17編成(85両)
9001F9002F9003F9004F9006F9007F9008F9009F9010F9011F9012F9013F9014F9015F9021F9022F9023F
離脱中…  1編成(  0両)
9005F
廃車済…  0編成(  0両)