2025年4月12日

【譲渡前の姿も記録を!】西武鉄道の『サステナ車両』8000系の車種、小田急電鉄8000形について

2024年5月中旬に小田急電鉄から西武鉄道に譲渡され『サステナ車両』(西武鉄道で使用する中古車両の独自の呼称)の第1弾となった国分寺線向けの8000系8103F(元小田急電鉄8000形8261F)が2025年4月10日に報道向けに公開されました。同年5月には同路線で営業運転を開始する予定となっています。2025年度は東急電鉄9000系についても譲受が予定されています。この記事では西武鉄道8000系の種車となる小田急電鉄8000形について紹介します

小田急電鉄8000形は1982年に登場し、1983年3月から営業運転に投入されている普通鋼製の電車で、2002年以降はリニューアル更新工事を施工して現在でも運用が続けられています。本格的な廃車は2020年頃(踏切事故で廃車となった1編成を除く)から行われており、2022年には4両固定編成でも初の廃車が発生しています。
▲西武鉄道国分寺線向け8000系8103Fの種車となった元小田急電鉄8000形8261F。編成番号がトップナンバーでなかったのは2025年度の車両譲渡を見越しているか。同系列は国分寺線中心の運用となり、基本的に新宿線系統(南入曽車両基地・玉川上水車両基地)に配属となる。
▲8000形はフルカラーLED式(2006年度以降)の編成が譲渡され、3色LED式(2005年度以前)の編成は廃車除籍処分になるものと見込まれる。2008年度以降リニューアルでドアエンジンが空気式の8263F8265Fがいるが、譲渡済みの西武鉄道8000系8103Fは小田急電鉄時代の2006年度のリニューアルとなっているため、空気式ドアエンジンとはなっていない。

8000形の現在の在籍数は以下の通りです。2代目5000形の新製投入と置き換えによる廃車により最盛期の半数となってしまいましたが、現在も活躍は続いています。なお6両固定編成は西武鉄道に譲渡が予定されており、今後の動きが気になる形式ではあります。現在の在籍数は以下の通りとなっています。

【小田急電鉄8000形の在籍状況】※2025年4月11日現在 全体…16編成80両/32編成160両
《4両固定編成》
運用中…8編成(32両)
8051F8053F8057F8058F8063F8064F8065F8066F
廃車済…8編成(32両)
8052F8054F8055F8056F8059F8060F8061F8062F
《6両固定編成》下線部は3色LED式の編成
運用中…8編成(48両)
8252F8253F8258F8260F8262F8263F8265F8266F
譲渡済…1編成(  6両)
8261F
廃車済…7編成(43両)
8251F8254F8255F8256F8257F8259F8264F

【西武鉄道8000系の在籍状況】※2025年4月11日現在 全体…1編成6両
8103F(元8261F)

ここでは西武鉄道8000系として譲渡される予定となっている、現役で活躍を続ける8000形の6両固定編成について1編成ずつ紹介していきます。これらの現役編成は4両固定編成とともに必ず記録をとっておきましょう。4両固定編成はE運用(代走でまれに一部のC運用)のみですが、6両固定編成はA運用とE運用(代走でまれに一部のC運用)に充当されています。なお譲渡対象外と思われる8000形6両固定編成の3色LED式の編成は省略しております。

小田急電鉄8000形は2012年3月の初代5000形が引退したことで同社の最古参の通勤形電車となり、この時点で4両固定編成・6両固定編成が16編成ずつ32編成(160両)が在籍していました。2020年に2代目5000形(10両固定編成)が導入されて廃車除籍処分が進み、現在では4両固定編成・6両固定編成ともに8編成ずつの16編成80両(2025年4月時点)となっています。ちなみに2002年度にリニューアルされた6両固定編成2本(8251F8255F)以外はVVVFインバータ制御(8059F8061FはSiC素子)となっています。2019年の本厚木(OH34)~愛甲石田(OH35)間での踏切事故で8264Fが廃車となった以外は、検査期限や経年劣化による廃車となっています。なお同形式の廃車は8257F(6両固定編成)が現時点で最後です。

種別行先案内表示器が3色LED式で残るのは6両固定編成2本(8253F8258F)で、それ以外はフルカラーLED式です。しかし西武鉄道への譲渡は6両固定編成が中心で、4両固定編成はSiCモジュール素子VVVFインバータ制御の2本(8059F8061F)を含めてすべて解体処分となっています。6両固定編成は2019年の踏切事故当該の1本を除き、すべて3色LED式の編成が廃車となっていますから、6両固定編成は8253F8258Fが解体処分となれば、それ以外の編成では譲渡可能であると推察できます。

【8000形8252F
8000形6両固定編成のなかで現役最古参のうちの1編成となっている8252Fは1983年に旧川崎重工業(現在の川崎車両株式会社)兵庫工場より登場、2006年度にリニューアル更新工事を受けており、この形式では初めて種別行先案内表示器がフルカラーLED式(当初は明朝体だが、現在ではゴシック体)が採用された編成となっています。最盛期には8052Fと組んでいましたが、同編成が2023年6月に廃車となったことで、現在の相方は8051Fとなっています。

【8000形8260F
8000形6両固定編成の8260Fは1984年に旧東急車輛製造(現在の総合車両製作所横浜事業所)より登場、2007年度にリニューアル更新工事を受けており、その際に座席にスタンションポールの形状が変更されたほか、乗降口の床面を黄色に変更するなど、4000形の意匠が取り入れられました。4両固定編成の8051Fが2007年度にリニューアル更新工事を受けて運用復帰する際に最初に組んだのがこの8260Fです。最盛期には8060Fとも組んでいましたが、同編成が2023年5月に廃車となり、そのあとを継いで組んでいた8061Fも2023年12月に廃車となったことで、現在は単独で運転されていることが多いようです。

【8000形8262F
8000形6両固定編成の8262Fは1985年に旧川崎重工業(現在の川崎車両株式会社)兵庫工場より登場、2006年度にリニューアル更新工事を受けていました。最盛期には8062Fと組んでいましたが、同編成が2023年1月に廃車、そのあとを継いだ8059Fも2024年10月に廃車となり、それ以降は単独運用に入っていましたが、2024年11月に8257Fの廃車に伴って相方を失っていた8057Fと組んでいるようです。

【8000形8263F
8000形6両固定編成の8263Fは1985年に旧川崎重工業(現在の川崎車両株式会社)兵庫工場より登場、2008年度にリニューアル更新工事を受けました。このとき4両固定編成への施工も開始されていた時期ですので、ドアエンジンが空気式へと変更されており、8000形の6両固定編成では数少ない空気式ドアエンジンを持つ編成となっています。現在の相方は2011年度にリニューアル更新工事を受けた8063Fで、こちらは10号車のみLED照明の試験車両です。

【8000形8265F
8000形6両固定編成の8265Fは1986年に日本車両製造(豊川製作所)より登場、2009年度に6両固定編成で最後にリニューアル更新工事を受けました。リニューアル更新工事を受けて運用復帰した当初は1号車のドアステッカーが女性専用車を初めて導入したときの初期の長方形のものが復活していたことでも注目されていました。8000形の6両固定編成では数少ない空気式ドアエンジンを持つ編成で、相方は2011年度にリニューアル更新工事を受けた8065Fとなっていて、基本的にはその編成と組まれますが、同編成がクヤ31形連結に対応する電源供給車の役割も果たすことから、定期検測運転を実施する日程のときは単独運用されることがあります。どちらもすべての車両がLED照明に更新済みとなっています。

【8000形8266F8000形6両固定編成の8266Fは1987年に旧東急車輛製造(現在の総合車両製作所横浜事業所)より登場、2006年度にリニューアル更新工事を受けました。現在の相方は2011年度にリニューアル更新工事を受けた10号車のみLED照明の形状が異なる8066Fですが、同編成がクヤ31形連結に対応する電源供給車の役割も果たすので、定期検測運転を実施する日程のときは単独運用されることがあります。

8000形の譲渡はこれらのフルカラーLED式(2006年度以降)の編成のみと見込まれます。ただしこの中にはドアエンジンが空気式の8263F8265Fがおり(2008年度以降リニューアル)、譲渡済みの8000系8103Fは小田急電鉄時代の2006年度のリニューアルで空気式ドアエンジンではありませんでしたので、8263F8265Fの処遇がどうなるか不透明ですね。個人的には譲渡の対象であってほしいですが、西武鉄道の電車には空気式ドアエンジンを持つ編成がいません(池袋線などに乗り入れる東急電鉄・横浜高速鉄道保有車両のみ)。そこがどうなるかによって譲渡数が変わってくるかもしれません。