2020年11月20日

【ワイドドア車では初】小田急電鉄1000形1751F(6両固定編成)が廃車除籍処分へ

2020年11月19日、小田急電鉄大野総合車両所で休車状態で留置が続く1000形1751F(ワイドドア車6両固定編成)ですが、空調装置などの撤去作業が進んでいるようです。このため同編成はワイドドア車で初めて廃車除籍となり解体処分になるものとみられます。
▲元1081F(8両固定編成)のうち6両を皮切りに本格的な廃車解体が進められている1000形、ついに当初からリニューアル対象外とされたワイドドア車にも廃車が発生することに。最初の当該となる1751Fはクヤ31形の電源供給車としても使用され、1号車クハ1951にも連結器が残されていた。
▲ワイドドア車の1000形(1751F・1752F)がクヤ31形の電源供給車として使用されるときは4両固定編成唯一の電源供給車である1051Fが運用中であるなどの諸事情があったときに1051Fの代役という印象があった(写真2枚は2017年2月撮影)。実際に2020年8月の定期検測運転のときには1051Fが1059F(レーティッシュカラー)の期間限定での10両編成運用への充当に伴い、その補填分として箱根登山鉄道の代走運用に使用されていた事情があり、電源供給車にワイドドア車の1752Fが使用されている。

当初の1000形リニューアル計画の発表では唯一対象から外れていた同形式のワイドドア車に廃車が発生するのは初めてのことです。1000形ワイドドア車は1990年から1991年にかけてラッシュ時の乗降をスムーズに行うことを目的に登場し、その当時は6両固定編成2本、4両固定編成6本の36両が製造されました。このときは両先頭車の乗務員室に一番近い旅客用扉(約1.5m)を除き約2.0mの旅客用扉が採用されました(現在は2000形と同じく1.6mとなり、旅客用扉が開いた状態で外側から見ると両側0.2mずつ引き残しているように見える)。そのため戸袋部分が大きく側面窓が小さくなり(その窓はパワーウィンドウ仕様とし車内のボタンで開閉できる)、着席定員が少なくなっています。車両間連結部分に最も近い車端部の座席は2人掛けであるため、ワイドドア車ではその座席はすべて優先席となっています。登場当時は廃車となった1751Fを含む一部編成に試験的要素を盛り込んでおり、側面部に3色LED式種別行先案内表示器、車内に種別行先や次の停車駅を案内する表示器(当時は試験的にLCDが設置された車両もあるが現在はLED式である)、そして座席の一部を跳ね上げる機能を初めて採用しました。この機能は乗務員室に最も近い箇所の座席に採用され、座席を折りたたむことで車椅子やベビーカーなどが使用できるスペースに変身できます。現在では折りたたみ式座席は消滅しており、車椅子やベビーカーが使用できるスペースに変わっています。今回廃車となった1751Fは当初から6両固定編成であったため、車内案内表示器は1092Fや2000形よりも小さく、ドアチャイムはありません。またクハ1951に連結器が残されており、クヤ31形の電源供給車としても活躍しました。1751Fの廃車に伴って同形式の廃車は合計22両になりました。残るワイドドア車は5編成(30両、1752F~1756F)、クヤ31形対応の電源供給車はワイドドア車のみでは1752Fのみとなります。同形式全体でも22両の廃車で合計で174両にまで減少しています。さらには1000形で3編成あるうちの電源供給車の1編成である1751Fが廃車となることで、クヤ31形と連結できる電源供給車がどうなるのかにも注目が集まることになりそうです。

1000形はリニューアル車以外の動向に注意しないといけません。大手私鉄で初めてコロナ渦での終電繰り上げを発表したことと、1000形の廃車解体が間接的にリンクするのかどうかは分かりませんが、終電を繰り上げるということは充当列車、運用数自体も幾分か減ることが予想されます。それに加えて1000形リニューアル改造の費用抑制(車両新製が安く済む時代)も相まって1000形の廃車はまだまだ進みそうな予感がします。レーティッシュカラーの編成のリニューアルの有無が不透明ですし(ただし箱根登山鉄道線内の自動放送はある)、現在も同形式リニューアル車の箱根登山鉄道運用すらありません(運転台には『登山線入線禁止』のラベルがある)。リニューアルされた編成は今後も運用を続けるものとみられますが、ワイドドア車以外の編成がどんな運命を迎えるのかが予想がつきませんね。少なくともクヤ31形の電源供給車は1編成は残してほしいところです。

【小田急電鉄1000形の在籍状況】
※2020年11月20日現在 合計174両/全体196両(改造中を含む)
青色…リニューアル車、赤色…レーティッシュ(リニューアルされていません)

*4両固定編成…14編成(56両、リニューアル28両、レーティッシュ16両)
内訳…1051F・1053F・1057F1058F1059F1060F1061F・1062F・1063F1064F1065F1066F1067F1069F

*6両固定編成…9編成(54両、ワイドドア30両)
内訳…1251F・1253F・1254F・1752F・1753F・1754F・1755F・1756F

*10両固定編成…6編成(60両、リニューアル50両、大規模改造20両)
内訳…1091F・1092F・1093F1094F1095F1096F
※1095Fの種車は元1056F+元1256F、1096Fの種車は元1052F+元1252F。

*改造中…10両(※リニューアルで1097Fとなる予定)
内訳…元クハ1055・元デハ1005・元デハ1105・元サハ1181・元サハ1381・元デハ1205・元デハ1305・元サハ1355・元デハ1405・元クハ1455

*廃車確定済…22両 ※搬出予定車両を含む
内訳
【編成単位で廃車】
1054F(クハ1054・デハ1004・デハ1104・クハ1154)
1068F(クハ1068・デハ1018・デハ1118・クハ1168)
1751F(クハ1751+デハ1701+デハ1801+サハ1851+デハ1901+クハ1951)
【車両別に廃車】
元クハ1155(元1055F)
元クハ1255(元1255F)
元クハ1081・元デハ1031・元デハ1131・元デハ1331・元デハ1431・元クハ1481(元1081F)