2020年11月4日、小田急電鉄が2021年3月に実施するダイヤ改正で鉄道工事を取り巻く環境や新型コロナウィルスの影響を考慮して、鉄道メンテナンス体制の持続性を高めることを目的に終電の時刻繰り上げと一部初電の繰り下げを行うことを発表しました。関東の大手私鉄で終電時刻の繰り上げと初電時刻の繰り下げの発表を行うのは初めてのことです。
▲小田急電鉄の通勤形電車の主力は2代目3000形(写真は3255F)や8000形(写真は8065F+8265F)である。このほかにはリニューアルや廃車が進行する1000形、少数派の2000形、東京地下鉄千代田線直通対応の4000形、そして2020年3月デビューの2代目5000形(写真は5051F)が運用されている。
近年では終電後から初電前にかけて行われる鉄道メンテナンスの人材不足(とその高齢化)や安全対策および防災対策のための時間確保が課題となっているほか、新型コロナウィルスの感染拡大により外出の機会やテレワークといった在宅勤務が浸透しているため、終電間際の夜間を中心に利用者が減少しています。今年は“Withコロナ”で生活を営んでいく必要がありますから、私たちの働き方や生活様式がコロナ前の状況に戻ることはないと予測した小田急電鉄が大手私鉄の先陣を切る形で終電の繰り上げを発表したのです。
時間帯別の利用状況をコロナ前と比較して見てみると、終日の利用状況は約24.2%の減少、朝ラッシュピーク時の利用状況は約18.9%の減少ですが、終電間際となると終日の利用状況の減少幅のおよそ倍となる約46.5%の減少となっています。なお2021年3月のダイヤ改正で影響が出る初電と終電間際の利用状況をこちらもコロナ前と比較し時間帯別に見てみると、初電あたり(4時台~5時00分・5時00分~5時30分)の利用状況は僅かに減少していますが、終電間際、特に23時30分から24時00分でコロナ前は約34.8%であったのに対しコロナ後は約半分の約18.3%にとどまっています。プレスリリースにあるグラフからも明らかですが、全体的に初電・終電・終日利用ともに減少していますが、特に終電間際の利用減少が顕著に表れていますね。そこで2021年3月実施のダイヤ改正では、現行ダイヤと比較して4時台を中心に初電あたりの発車時刻を約10分前後繰り下げるほか、24時台を中心に終電間際の発車時刻を約20分程度繰り上げます。
大まかに区間別で見てみると、小田原線の新宿(OH01)~成城学園前(OH14)間は下り列車で約10分程度の繰り上げ、上り列車では概ね変更なし、成城学園前~向ケ丘遊園(OH19)間は下り列車で約10分程度、上り列車で約20分程度の繰り上げ、成城学園前~町田(OH27)間は上下列車とも約20分程度の繰り上げ、町田~小田原(OH47)間は下り列車で約20分程度、上り列車では約15分程度の繰り上げ、多摩線では下り列車で約20分程度の繰り上げ、上り列車では概ね変更なし、江ノ島線では上下とも約10分程度の繰り上げとなります。最大では下り列車は向ケ丘遊園以西と多摩線で約20分、上り列車は向ケ丘遊園~成城学園前間で約20分の繰り上げとなります。こうなると行先別最終列車に影響が出ることは必至です。
ここでは上下列車とも平日のダイヤにおける初電および終電間際の時刻種別行先を表記していますので、時刻表と照らし合わせながら確認していきましょう。まずは下り列車(新宿発の列車が基準)です。
まず小田原線の小田原行き最終列車は新宿23時42分発の3081レ(平日E28運用)、本厚木(OH34)行き最終列車は新宿24時08分発の1299レ→6765レ(平日E23運用)、海老名(OH32)行き最終列車は新宿24時20分発の1301レ→6767レ(平日E33運用)、相模大野(OH28)行き最終列車は新宿24時38分発の1303レ→6769レ(平日E12運用)、向ケ丘遊園行き最終列車は新宿24時39分発の6229レ(平日B24運用)、経堂(OH11)行き最終列車は新宿24時53分発の6231レ(平日E24運用)でそれぞれ設定があり、向ケ丘遊園行き最終列車の6229レが8両編成である以外は10両編成での運用です。向ケ丘遊園以西に行く4本の列車は現行ダイヤよりも約20分の繰り上がり(発車時刻も約20分前倒し)、最後の2本の列車は現行ダイヤよりも約10分の繰り上がり(発車時刻も約10分前倒し)となります。
なお江ノ島線では片瀬江ノ島(OE16)行き最終列車は相模大野24時17分発の5329レ(平日A32運用)で設定があり、新宿発では3081レ(平日E28運用)からの最終連絡になります。大和(OE05)行き最終列車は相模大野24時39分発の5331レ(平日A39運用)で設定があり、新宿発では23時57分発の1297レ(平日E31運用)からの最終連絡になります。いずれも新宿発の列車の発車時刻が繰り上がりますが、相模大野から乗り継ぎの片瀬江ノ島行き最終列車は概ね変更がないため、繰り上げ時間目安は約10分となります。ただし大和行き最終列車は発車時刻が繰り上がるので注意です。
さらに多摩線では唐木田(OT07)行き最終列車は新百合ヶ丘(OH23)25時06分発の7907レ(平日B27運用)で設定があり(新宿24時09分発)、新宿24時38分発の1303レ→6769レ(平日E12運用)からの最終連絡になります。どちらの列車も発車時刻が繰り上がるので繰り上げ時間目安は約20分となります。
一方こちらは上り列車(小田原・片瀬江ノ島・唐木田発の列車が基準)です。小田原線の小田原発では新宿行き最終列車が23時04分発の1298レ(平日E12運用・相模大野で片瀬江ノ島行き最終列車に連絡)、乗り継ぎのうえで経堂までであれば小田原を23時15分発の6808レ(平日A44運用)(同列車の終着本厚木で同駅24時02分発の6704レ(平日E71運用)に連絡)、成城学園前までであれば小田原23時36分発の6706レ(平日A22運用)、町田までであれば小田原24時03分発の6812レ(平日A35運用)で設定があります。新宿までは概ね変更がないものの、成城学園前までは現行よりも約20分、町田までは現行よりも約15分の繰り上がりとなります。
江ノ島線の片瀬江ノ島発では本来の最終列車は24時25分発の5332レ(平日A21運用)ですが、新宿まで移動する場合は遅くとも片瀬江ノ島23時10分発の5320レ(平日A42運用)に乗る必要があります(相模大野で1298レ(平日E12運用)と接続がある)。ただし経堂までであれば遅くとも片瀬江ノ島23時40分発の5326レ(平日A34運用)に乗る必要がありますし(相模大野または町田で6704レ(平日E71運用)と接続がある)、成城学園前までであれば遅くとも片瀬江ノ島23時53分発の5328レ(平日A20運用)に乗る必要があります(相模大野で6706レ(平日A22運用)と接続がある)。なお町田までであれば5330レ(平日A41運用)、相模大野までであれば5332レ(平日A21運用)があります。新宿までは概ね変更なしですが、経堂までと町田までは約10分、成城学園前までは約20分の繰り上げとなります。片瀬江ノ島発の終電間際の列車は町田または相模大野行きがほとんどですが、列車によって乗り継ぎでさらに移動できる場合があるので、時刻繰り上げ後も乗り継ぎできる列車とダイヤを把握した方がいいと思います。
多摩線の唐木田発では本来の最終列車は24時06分発の7808レ(平日A13運用)ですが、新宿まで移動する場合は遅くともその前の23時45分発の7806レ(平日E32運用)に乗る必要があります(新百合ヶ丘で1298レ(平日E12運用)と6700レ(平日E24運用)と接続がある)。なおこちらは概ね変更はありません。
一方では始発列車についても繰り下げが行われます。まずは小田原線の上り列車から見ていきます。初電(一番列車)は駅によって異なりますが、小田原と開成(OH42)~愛甲石田(OH35)間各駅は小田原を4時45分に発車する1000レ→3000レ(平日E23運用)、足柄(OH46)~栢山(OH43)間の各駅は小田原4時49分発の7000レ(平日A20運用、新松田行き・その前の1000レ→3000レが両駅を通過するため含まず)、本厚木・厚木(OH33)の各駅は本厚木5時16分発の6000レ(平日C14運用、千代田線・常磐線直通我孫子[JL-30]行き)、海老名~小田急相模原(OH29)間の各駅は海老名4時55分発の6752レ→1202レ(平日E24運用)、相模大野~柿生(OH24)間の各駅は相模大野4時45分発の6750レ→1200レ(平日E70運用)、新百合ヶ丘~喜多見(OH15)間の各駅は新百合ヶ丘4時50分発の6400レ(平日B18運用)、成城学園前~千歳船橋(OH12)間の各駅は成城学園前4時53分発の6202レ(平日E71運用)、経堂~南新宿(OH02)間の各駅は経堂4時49分発の6200レ(平日E72運用)となっています。新松田~相模大野間と向ケ丘遊園~経堂間は概ね変更なしですが、小田原~新松田間と相模大野~向ケ丘遊園間は約10分(前者は急行から各駅停車に変更となり、6両編成の新松田行きに変更予定)、経堂~新宿間は約5分の繰り下げとなります。大半が各駅停車ですが、小田原と開成は上り初電が急行から各駅停車に変更となりますが、新松田~愛甲石田間の上り初電は快速急行(新松田始発に変更か?)のままとなるでしょうか。
今度は江ノ島線および多摩線の上り列車です。江ノ島線の上り初電は大和(OE05)~東林間(OE01)間の各駅が大和4時55分発の5100レ(平日A40運用)、桜ケ丘(OE06)以遠の各駅は片瀬江ノ島4時54分発の5102レ(平日A33運用)となっています。後者は概ね変更なしですが、前者は約15分の繰り下げとなります。一方の多摩線の上り初電は唐木田4時43分発の7900レ(平日B28運用、新宿行き)となっています。こちらは全区間で約10分の繰り下げとなります。
続いては小田原線の下り列車を見ていきます。新宿~豪徳寺(OH10)間は新宿5時00分発の6505レ(平日B26運用、新松田行き)、経堂~百合ヶ丘(OH22)間の各駅は経堂4時53分発の6503レ(平日E25運用、伊勢原(OH36)行き)、新百合ヶ丘~玉川学園前(OH26)間の各駅は新百合ヶ丘5時08分発の6505レ(平日B24運用)、町田は5時03分発の6803レ(平日E38運用)、相模大野~渋沢(OH40)間の各駅は相模大野4時50分発の6801レ(平日A43運用)、新松田~足柄間の各駅は新松田5時22分発の7001レ(平日A20運用、7000レの折り返し)となっています。こちらでは相模大野~新松田間が約5分の繰り下げである以外は概ね変更なしとなっています。江ノ島線の下り初電(相模大野4時55分発の5101レ(平日A36運用))・多摩線の下り初電(新百合ヶ丘5時42分発の7601レ(平日A15運用))もそれぞれ概ね変更なしです。
全体的に見ると、終電の繰り上げ幅を可能な限り大きくしたため、初電の繰り下げは最大で江ノ島線上りの大和~相模大野間の約15分である以外は約10分以下にとどまっています。また下りの初電に関しては相模大野~新松田間のみ(ここでいうと6801レのみ)の繰り下げとなっていますね。今後初電および終電間際の列車を利用する際には細心の注意が必要といえそうです。